おしごとオーケストラ

キャリアの仕事がしたい人も転職したい人も。転職エージェントのナカの人、こやとのブログ

【実例】求人マッチングの精度を高めるためには、どのように求人を選別すればいいのか

この記事では、転職エージェントのキャリアアドバイザーが、転職希望者に対してどのように求人を探す(=求人マッチング)のか、その方法論をお伝えします。

 

世の中に非常に多くある職種の中から、転職希望者の方の経験と希望に沿うものを選定するのは簡単なことではないです。だからこそ、求人マッチングの精度は、キャリアアドバイザーによって個人差が大きいポイントになっています。

転職エージェント会社も問題意識を感じており、最近ではAI導入によって個人差を解消しようという動きもありますが、私が業界で実際に働いている中で感じている肌感覚としては、AIマッチングの精度はまだまだです。

そこで、私が新人時代にしていたマッチングと、数年経験したいま行なっているマッチングの違いをお伝えします。

これを読めば、転職エージェントを目指す方は仕事イメージがいっそう具体的に湧くでしょうし、転職希望者の方にとっては自分で求人を探すレベルが飛躍的にアップするはずです!

 

■新人の頃の私がしてたのは「必須要件マッチング」

転職エージェントで保有する求人に記載されている仕事内容や、転職希望者が登録する経験職種にはすべて職種コードを記入することが求められています。

例:営業、経理、総務、法務、経営企画、広報、マーケティング、etc.

 

そしてこれが私が当時やっていた求人マッチングの具体的なやり方です。

1)転職希望者の諸条件を入力する(年齢、学歴、勤務地、年収など)

2)さらに希望職種の職種コードを複数入力して、「検索」をクリック

3)Hitした求人について、一つひとつ必須要件をみて合致しているかを目検する

 

例を挙げてみましょう。

例:26歳 大卒文系 女性 無形サービス営業経験4年

「営業に疲れたので内勤がしたい。留学経験があるので英語力も活かせたら嬉しい」

 

さて、上記の求人マッチングの仕方をして、Hitした求人を目検しながら、こんなことを頭の中で考えていました。

『事務職の経験がないから、未経験応募OKの求人を探そう。英語を求められる事務職だと貿易事務はどうだろうか。(調べてみて)あぁでも事務未経験でも応募できるような貿易事務はそんなになさそうだ。営業経験はあるから、営業事務がいいかな』

 

私は当時まったく疑うことなくこうしたスタンスで求人マッチングをしていたのですが、どうでしょうか?問題を感じますか?「べつに普通でしょ」なんて思われたとしたら、以下を読む価値十分ですね!

 

■私はあるとき「必須要件マッチング」の問題点に気づいた

本当に不思議に思ったんですが、なぜかこのやり方だと、応募しても書類通過率が低かったんです。つまり求人のマッチング精度が低かった。さらに、上司や先輩に相談してみると、私が見つけられなかったような求人をどんどん紹介してくれたんです。ただそれは単純に経験値の差なんだろうと思ってました。

 

そんなとき、企業から「この求人は採用決定したので、募集終了で」と連絡をもらいました。「ちなみにどんな方で決まったんですか?」と聞くと、聞いていたはずの必須要件には当てはまらない経歴の人が採用されていたんです。

私は、採用方針がいつの間にか変わったんだと思いました。自分がキャッチできていなかったのが悪かったのだろうと。だからいっそうまめに連絡をとるようにすることで改善しようと考えました。

ただ、また同じようなことが起こったあるとき、今まで以上に深く採用決定者の経験を尋ねてみると、確かにその仕事ができそうだな、と妙に納得できたんです。

 

企業は、あくまでその仕事ができる人を求めているのであって、その要件に適う人を求めているわけではありません。私は、その仕事ができれば要件に適っていなくても採用になるということ、たとえ要件に適っていてもその仕事ができなければ不採用になるということにそのとき初めて気づいたんです。

私には、必須要件ではなくて「その仕事ができるか」という考えが欠如していたんですね。

 

■「仕事内容」で求人を選別できるようになろう

お気づきでしょうか?「必須要件マッチング」だと求人の必須要件はもちろんチェックするのですが、実は仕事内容はほとんど読んでいないんです。

必須要件に囚われずに「その仕事ができるのか」という視点を持って求人を選別するからには、当然ながら、求人票に書かれている仕事内容を読み込まなくてはいけません。

キャリアアドバイザーだって自分でやったことがない仕事ばかりですから、字面からその仕事の具体的な立ち居振る舞いを想像するのはかなり骨が折れるんですが、逆に言えば、よっぽど今まで安易な求人マッチングのやり方をしていたんだってことですよね。

 

さっきと同じ例を挙げてみましょう。

例:26歳 大卒文系 女性 無形サービス営業経験4年

「営業に疲れたので内勤がしたい。留学経験があるので英語力も活かせたら嬉しい」

 

さて、求人マッチングをしているときの頭の中はこんな感じです。

『無形サービスということは、提案資料作りなど事務的な動きも比較的多かったはず。ということは、たとえ事務経験が必須要件と書かれているような求人であってもさほど専門性を求められなければ全然応募できるだろうな。同じ貿易事務の仕事であっても、この会社は事務スキルよりも英語を使ったコミュニケーション力が重視されるような仕事内容だから、きっと評価されるはずだ。』

 

まずはそもそも転職希望者の経験した仕事を深く読み込みます。無形サービス営業という仕事から、資料作成、内勤、社内調整、顧客折衝、営業目標を追う、といったいくつかの要素を抽出しています。

その上で、求人に書かれている仕事内容をチェックします。一口に事務と言っても、営業事務と貿易事務では仕事内容が大きく異なり、また同じ貿易事務であっても、海外窓口を中心に担ってほしいのか、あるいは英語文書まわりを中心に担ってほしいのか、求人によって重視されるポイントは異なります。

こうして、求めるスキルや人物素養が合致するのなら、要件は気にしすぎずに、どんどん応募を促すようにしてみました。

結果的に、少しずつですが求人マッチングの精度を高めることができました。

 

■必須要件は、あくまでその仕事内容ができそうな人を想定して書かれたものに過ぎない

実は求人票に記載のある必須要件は、ほどほど流動的です。また、必須要件そのものを企業側が指定するケースもあれば、各リクルーティングアドバイザーが書いているケースもあります。

じゃあキャリアアドバイザーとしては、そんな流動的な必須要件に左右されるんじゃなくて、仕事内容をもとにして求人マッチングをしたほうが、よっぽど実態を捉えた求人選別をすることができます。

もちろん必須要件をまったくチェックしないなんてことはないですが、それでも鵜呑みにしすぎる必要はないですね。バランスをとることは永遠の課題ですが、世の中に非常に多くある仕事内容をそれぞれ理解することも含めて、突き詰めることに終わりがない仕事です。だからこそこの仕事は面白いですよ!